
九州大学様 准教授 岩崎健様よりRAID6(HDD 8TBx7台)サーバーのデータ復旧作業をご依頼いただきました。RAID6の構成が壊れてしまい7本のディスク中、3本が外部の扱いとなりドライブをマウントできずデータを読み出せない状況から28,270ファイル(約15.3TB)のデータが復旧可能となりました。
事の発端はUPSの電源断のトラブルでした。そのUPSはもともと調子が悪く、バッテリー残量がかなり減ってる状況で、今回データレスキューセンターさんで復旧していただいたRAID6構成のサーバーと、もう1つ別のサーバーと、合わせて2台のサーバーが繋がっていました。ある日、そのUPSに突然の電源断が発生し、まずは別サーバーのほうで最初に不具合が発生しました。その時点では今回依頼したサーバーについては特段問題なく動いていましたが、その後ファンの異常が発生し、最終的にRAID6の構成自体が壊れてしまい、ディスクは認識できるようになったものの、7本のディスク中、3本が外部の扱いとなりドライブをマウントできずデータを読み出せなくなりました。
研究用の画像のデータで、顕微鏡のガラススライドの標本をデータ化したものです。仮運用でバックアップを取っていないまま2~3年運用されていましたが、スタッフに確認したところ、現実的にはもう仮運用ではない状況になっていることがわかりました。ガラススライドさえあればもう1度データ化することは可能ですが、中にはガラススライドが手元にないものや、枚数も1000枚以上ということで、0からデータ作り直すのはかなり厳しい状況でした。データを入れていたドライブはSASディスク7本のRAID6構成でした。自分達でRAIDの再構築を試みることで今よりもさらに状況を悪化させてしまうリスクもあることから、今回はデータ復旧の専門業者さんにデータを復旧していただいた上でRAIDの再構築をしたほうがいいという判断をしました。
データ復旧は高額を請求されるケースも耳にしていたので、適正な金額かつ信頼ができる業者に依頼したいと考えていたところ、九州大学内でデータレスキューセンターさんとの取引実績が確認できました。まずは現状についてメールと電話で技術者の方に相談したところ、推測される目安の費用や復旧可能な場合のリスト提示など復旧に関する対応について丁寧に説明をいただき、信頼してお任せできそうだということで実際に調査をお願いする運びとなりました。
僕たちの仕事は病理診断といって、手術や内視鏡で患者さんの体の中の病気の場所から採取した組織を標本にして、顕微鏡で見て診断していくことです。病院での診療業務と研究業務の両方を担っていますが、診療では患者さんの標本を顕微鏡画像として完全に再現できるバーチャルスライドデータを、別の専用のサーバーで運用しています。研究では、技術革新により顕微鏡カメラから高感度高精細な画像が得られるようになり、また、次世代シーケンサーと呼ばれる一度に大量の遺伝子解析が可能な装置からは、1ファイルあたり数~数十GBにも及ぶデータが出力されます。これらの研究データについても、すべて、別のサーバーに蓄積している状況です。
今回依頼したサーバー以外のサーバーについてはバックアップ体制を十分に整えています。HDD自体も高グレードのものを使用したり、なんらかの障害予兆が発生した場合はすぐに新しいディスクに切り替えるなど、常に状態については確認を行っているため、今までデータ復旧業者さんにお願いするような大きなトラブルはありませんでした。一方で、今回のサーバーは仮運用で、明確な管理者も決まっていませんでした。私もバックアップを取っていないことは気になっていたものの、仮運用であることやかつRAID6構成のSASドライブで構成されてたので、一気に壊れることはないだろうという甘い考えもあり、対応が遅れてしまいました。
まず、中2営業日での復旧可能という結果報告のスピードに驚きました。持ち込み時に報告予定日についてお伺いはしていましたが、データが膨大なことやRAID6構成ということもあり、実際はもう少し時間がかかると思っていたので、やはりプロの仕事はスピードが違うなと感心しました。復旧可能なデータリストで顕微鏡画像ファイルについても確認できたこと、金額についても事前に説明をいただいたとおりの堅実な額でしたので、データ復旧作業を依頼させていただきました。
病理と聞くと、「患者さんの病気を調べる検査」というイメージが強いかもしれません。たとえば胃の調子が悪くて内視鏡を行った際、見た目だけではがんかどうか判断できないことが多々あります。そうしたときに病変の一部を採取し、顕微鏡で詳しく観察します。必要に応じて、特別な染色をして分子マーカーを色で可視化したり、遺伝子の情報を調べたりしながら、どんな性質の病気なのか、どのような治療が適しているのかを明らかにしていく。これが僕ら病理医の役割です。病理学の魅力は、全身のすべての臓器の病気に対応できることにあります。
見た目だけではわからない病気の本質を、顕微鏡で見える組織の形と患者さんの検査値などを総合して読み解いていくところに、奥深さを感じます。一方で課題もあります。病理は普段の医療現場では表に出にくい職種で、研修医に魅力を積極的に伝えなければ、この道に進んでくれる人がなかなか増えません。九州大学は幸い、毎年2~3名の新しい仲間が入って来てくれていますが、全国的に見ると病理医を志望する医師はまだまだ少ないのが現状で、リクルートには苦戦しています。
病理医は全身すべての臓器を診る必要がありますが、診断や研究を通じて、経験を積むことで、より深く精通する専門領域があります。僕はその中でも、骨や筋肉、皮膚の腫瘍に関わることが多く、この領域を専門としています。また、がんの遺伝子異常をもとに治療を選択する「がんゲノム医療」にも深く関わっています。現在取り組んでいる研究は大きく2つあります。1つは腫瘍微小環境の研究です。腫瘍は、腫瘍細胞と腫瘍の中にある正常細胞がいろいろな物質のやり取りをしながら相互作用によって成り立っています。このような腫瘍をとりまく環境全体を腫瘍微小環境といい、腫瘍の性質を大きく左右します。本来、免疫細胞はがんを排除する働きをもっていますが、免疫を抑え込んで増殖するがんも存在します。近年、こうした免疫抑制を解除する免疫療法が注目されていますが、骨軟部腫瘍などの希少がんでは研究が進んでいない部分が多いため、この領域を重点的に研究しています。
2つ目はエピトランスクリプトームの研究です。従来は、がんのDNAの異常を調べればがんのことがすべて理解できるのではないかと考えられていましたが、近年は遺伝子の配列そのものに異常がなくても、RNAの修飾による発現量の調整機構が乱れることが癌に影響することがわかってきました。こうした、がんの遺伝子の発現レベルを制御する機構に関しての異常を解析するのがエピトランスクリプトーム研究であり、がんの新しい理解や治療標的に繋がる可能性がある領域です。
高度な解析技術が発展し、一度に膨大な情報が得られるようになったことで、今後さらなる発見が期待されています。一方で、細かいところばかりに注目しすぎると「木を見て森を見ず」になりかないので、常に「木を見て森も見る」という視点を大切にする研究者であり続けたいと思っています。
業務データの復旧は失敗が許されず責任も大きいため、信頼できるプロにお任せするのが一番安心できると思い、今回データレスキューセンターさんに依頼しました。無事にデータを復旧していただき、本当に助かりました。今回の件で、バックアップの重要性を痛感しました。今回の事態をいい教訓として、仮運用であっても油断せず都度バックアップを取得するなど、堅牢な体制を構築していきたいと思います。