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Vol.65 最新のフラッシュメモリ(USBメモリ、SDカード、SSDなど)について

最新のフラッシュメモリ(USBメモリ、SDカード、SSDなど)について

職場や学校、自宅でも気軽に使えて持ち運びにも便利なUSBメモリ。最近ではスマートフォンに接続して使えるようなモデルも販売され、身近なデータ保存メディアとして不動の地位を築いているといえます。100GBを超えるような大容量の製品も普及し、その便利さは増すばかりです。
しかし、日常的に使用しているUSBメモリも、どのようにデータを保存しているのか、どういった技術が使われているのかをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

セルと電子量

USBメモリ、SDカード、SSDなどの記録媒体は「NAND型フラッシュメモリ」というものにデータを記録しています。デジタルデータの最小単位は「ビット」で、1ビットは2進数の1桁の値=「0」もしくは「1」を表します。NAND型フラッシュメモリには非常に多くの「メモリセル」という回路が含まれ、メモリセルに電子をため込むことで、0と1の二つの状態(1ビット)を持ち、そのセルを多数並べてデータとして表現します。

シングルレベルセル

ひとつのセルあたり1ビットの保存を行うものをシングルレベルセル(Single Level Cell)と呼びます。セル内の電子量が一定より少なければ0、多ければ1と、電子量によって2つの状態を使い分けるという単純な仕組みです。これが半導体メモリのもっとも基本となる仕組みで、初期のフラッシュメモリはいずれもSLCでした。しかしデータ量はセルの数に単純比例することになるため、セルを節約する仕組みが考案されるようになります。

セルあたりの記録量を増やすことで節約

マルチレベルセルとトリプルレベルセル

そこで開発されたのがマルチレベルセル(Multi Level Cell)と呼ばれる仕組みで、これは1つのセルに2ビットの情報を保存します。電子があるかないかの2種類ではなく、電子の量によって4種類(2の2乗)の状態を持ちます。SLCと同じ大きさで倍の容量を確保できるということになります。さらに次に生まれたのがトリプルレベルセル(TLC)で、ひとつのセルに3ビット(8種類、2の3乗)の情報が保存できます。SLCよりMLC、TLCの方がより低コストになるため、現在ではエンタープライズ向けの高機能品以外はTLCの製品が主流となっています。

セルあたりの情報量(ビット数)を段階的に向上

クアッドレベルセル

2018年には、さらにひとつ上のクアッドレベルセル(Quad Level Cell)に関する技術が公開されました。電子量が1/4より少なければ「00」、1/4と1/2の間なら「01」、1/2と3/4の間なら「10」、3/4以上なら「11」と区別することで、4つの状態=2ビットの情報量を持つようになったのです。ひとつのセルに4ビット(16種類、2の4乗)の情報が保存できるため、これまでのTLCよりもさらに大容量化が可能になります。

※2020年の時点ではまだ研究段階ですが、さらにこの上のPLC(Penta Level Cell)という1つのセルに5ビット(32種類)の情報が保存できるセルの開発も進んでいます。

QLCでは1つのセルで4ビットの情報を持っている

ところが、このQLCも良いことばかりではありません。SLCは1セルに1ビット単位での保存を行うので、使用する電圧はONかOFFの2段階だけです。しかし、MLCではその2倍、TLCでは4倍、QLCでは実に16倍の段階で電圧を制御する必要があります。そのためQLCには非常に精度の高い制御が必要になり、そのぶん読み書きの速度は低下してしまいます。ハードディスクと比べて読み書きの速度が非常に速いというのがフラッシュメモリの大きな特徴でもあるため、そのメリットを損なうQLCを問題視する人もいるようです。

また、耐久性が低下するという側面もあります。フラッシュメモリには電荷を保持するためのフローティングゲートと呼ばれる構造があり、これは電荷抜けを防ぐための絶縁体の中に構築されています。しかしこの絶縁部分に超高電圧をかけることで電子を移動させているため、絶縁体は徐々に破壊されていきます。破壊が進み電荷抜けが起こるとデータを保持できなくなります。フラッシュメモリの書き換え回数の上限、寿命というのはこの原理に起因します。

フローティングゲートの模式図。書き込み時、制御ゲートに電圧を加えると、基盤側からフローティングゲート側へ電子が移動し、フローティングゲート内に保持される。そのため、電源が切られた状態でもデータがなくならない。消去時、シリコン基板側に電圧をかけることで、フローティングゲート側からシリコン基板側に電圧が移動する。いずれの場合も酸化膜(絶縁体)を通過して電子が移動するため、酸化膜は劣化する。劣化が進むと電子を保持できなくなり、データが消えてしまう。

セルレベルが上がれば上がるほど絶縁体の消耗は激しくなり、SLCでは9万~10万回とされている書き換え回数の上限は、QLCになると3,000~5,000回と10分の1以下にまで低下するとされています。つまり、QLCのフラッシュメモリは今までのフラッシュメモリと比べて長期利用ができないというわけです。
もっとも、読み書き速度の低下や書き換え回数の上限に関しては、一般的なパソコンユーザーの使用方法ではそのデメリットを体感できるほどのものではないという指摘もあります。

耐久性と速度の低下について

書き込み耐性を表す指標としてTBW(Terabytes Written)という数値があります。オフィスや家庭のPCで利用されるSSDを想定し、繰り返し書き込みを行ったとした場合に書き込むことができる最大のデータサイズを表したものです。TLCで400~600TBW、QLCでは200TBWというのが平均的な数値になります。

QLCはTLCの半分以下の寿命なのですぐに壊れると感じる方もいるかもしれません。しかし一般ユーザーの現実的なパソコンの使用法で考えてみると、毎日数GB程度の書き込みをする程度なら、200TBの書き込みをするには数十年以上はかかる見積になります。これではセルの劣化による寿命より、SSD本体やパソコン自体の寿命の方が先にくるでしょう。

また読み書きの速度についても同様で、TLCとQLCで速度を比較した場合、おおよそ60~80%の性能差がつきます。この程度では体感差が出るかは微妙なところです。ただし特に大きな性能差がつくのはキャッシュが切れた時の挙動で、QLCの場合は著しく性能が劣化するケースが多いようです。そのためキャッシュが切れやすい作業をする場合、具体的には大容量のデータ転送が連続して発生するような使い方をするのであれば、結果的な転送速度には大きな差がつくことになります。

よって大容量のデータの書き込みや転送を頻繁に行うといった使い方であれば、QLCは避けた方がよいでしょう。特にそういった使い方はされず、またスペックよりコスト重視ということならQLCもお勧めになります。

既にこのQLCを採用した製品も一般に販売されていますが、2020~2021年の段階ではTLCとの価格差もあまりなかったため、まだTLCが主流となっていました。しかし今後量産が進み、容量単価の差が大きくなっていくと、QLCが主流になっていくと見られています。

擬似的なシングルレベルセル

現在の市販メモリ製品の多くはTLCのフラッシュメモリが使われていますが、高い信頼度が求められる工業製品においては現在でもSLCのフラッシュメモリが使用されています。しかし大容量化や価格競争の中で一般市場での需要が減ったSLCは限られた製造ラインでしか作られておらず、ますます高価なものとなっており、一般的なTLCタイプのSSDと比較すると市場価格で10倍以上の差がついています。

そこで、疑似的にTLCがSLCのような挙動をするように制御する「SLCモード」という仕組みを導入したメモリーカードも発売されています。本来8分割され3ビットの情報が入るセルに、あえて1ビットの情報だけしか入れないという仕組みです。本来のメモリ容量の4分の1、例えば容量8GBのUSBメモリだと2GBとしてしか利用できなくなるのです。しかし、流通量が多く価格も安いTLCのフラッシュメモリが使用可能なので、同じ容量のSLCを使ったものよりもコストは圧倒的に下がります。それでいて信頼度はSLCとほぼ同等になるというのがこの製品の特長です。

業務用の製品なので一般流通では入手が難しいですが、今後需要が増えるようであれば入手しやすくなるかもしれません。例えばドライブレコーダや防犯カメラなど、繰り返し上書きするような過酷な環境では、SLCモードが有効に働くと予想されます。

ドライブレコーダと防犯カメラ

平面から立体へ、3D NAND

微細化技術以外で容量を増加させるための方法に関しても触れてみましょう。
NANDフラッシュメモリの記憶容量は、ダイとよばれる一つのチップあたりの容量で決まります。半導体の製造工程で、シリコンでできた薄い円盤に素子や配線のパターンを焼き付け、それをさらに切り分けてできる1枚のチップをダイとよびます。このダイにどれだけ効率よくセルを配置し記憶容量を増やすかに関しても、メーカーは競って研究開発を行いました。
しかし、2011年ごろからはそれまで以上の大容量化が次第に難しくなってきていました。大量のセルを並べて動作させるものなので、隣接するセル間での電気的な干渉が増大してしまい、読み書きの信頼性が損なわれやすくなってきたのです。また、半導体に回路を焼き付ける際に使われるリソグラフィという技術も、その微細化が限界に近づいていたという側面もありました。2015年ごろには微細化技術は頭打ちになったとされています。
これらを解決する手段として、「3D NANDフラッシュ」と呼ばれる画期的な技術が開発されました。これまで平面だったセルの配置を、文字通り立体的に行うことで容量を増やすという手法です。
それまで戸建ての内部で少しずつ増やしていったところを高層ビルで一気に増設したかのような革新的なアイデアでした。

少しずつ増やしていった戸建ての内部を高層ビルに増設する図

2007年に東芝が積層技術を発表して以降、各メーカーが競って3D構造化を推し進めました。そこから製品化されるまでは時間がかかりましたが、2015年頃から3D NAND製品として一般的に販売されるようになりました。

技術の向上は目覚ましく高層化は今もなお進んでいます。初期の3D NANDの積層は32層に始まり、2018年ごろにはメモリセルを縦に96層に並べた製品が出現し注目を集めましたが、2020年にはMicron Technologyが176層という超高層化の技術を発表しています。今後もより高層化は進めていくことが可能とのことなので、現在は64層や96層の製品が一般的ですが、より高密度な製品が市場に出回ることになりそうです。

フラッシュメモリについて様々な技術を紹介してきましたが、記憶メディアが消耗品であることに変わりはありません。大切なデータを失うリスクを減らすためには、やはり定期的なバックアップが何よりも重要です。

もちろん、データレスキューセンターでは様々なフラッシュメモリのデータ復旧実績がございます。特殊なメモリであってもデータ復旧に対応していますので、万が一、データでお困りの際はお気軽にご相談ください。

3つのお約束

データ復旧のウソ?ホント?

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